Getting Realを特許庁の失敗から学ぶ
by kuippa on 1月.26, 2012, under 未分類
日本の大手SIerが建てた砂上の楼閣が崩れたというニュースが入ってきた。調査報告書がUPされたので読んだ。
そこには”設計要員”が450人動員されたと書かれいた。
あぁ、なんだファンタジー小説じゃないか!
費やした55億円、水の泡に 特許庁がシステム開発中断
www.asahi.com/business/update/0124/TKY201201240616.html
特許庁は24日、2006年から始めた新たな情報システムの開発を中断することを決めた。これまでに55億円の予算を投じたが、別のシステムを考える。
新システムの開発期間は06年12月から14年1月。設計を東芝ソリューションと、開発管理をアクセンチュアと契約した。
開発の遅れは、主に設計の不備が原因。特許庁は検証委員会を設け対応を考えてきたが、委員会は23日、中断を求める報告書をまとめた。業者が今までに作ってきた設計情報は、特許庁の別のシステム開発に生かしていくという。
せっかくなので、Getting RealとFantasy SIerを題材に学んでみようと思う。
Getting Realは長すぎる。意訳をつくってみたけど長すぎるんだよね。
超訳だよ。
**日本のファントム vs Gettign Real
まるで大きな政府か小さな政府かの争いのようだ。
Gettign Realと特許庁の今回頓挫したシステムとの大きな違いの部分に注目して、書きだしてみようと思う。
1.機能はとことんまで削れ
他方、特許庁のシステムは「何でもかんでも」にしたようだ。当初60Mステップの開発規模を予定していたそうだ。Gettign Realは7行のコードより4行のコードを美徳とする。7行を4行にするためには才能と努力が必要だ。三流プログラマが書いた1万行のコードは練度の高いプログラマの200行に性能でも敵わないことがある。当然200行のほうが保守性も拡張性も高い。
ステップ数でプログラムを評価すると、性能も低く拡張性も保守性もないプログラムを評価してしまうことになる。
2.チームは3人いれば十分
他方、特許庁のシステムは上流工程を重視し設計要員を450人体制とした。上流工程って(笑)
37signalが提案する3人のチームの中には当然設計だけしかできない要員は含まれない。そもそも設計だけの要員を想定していないのだろう。日本の現場をおもいうかべると、そもそも論理的に実装ができない設計がなされている様が目に浮かぶ。こんなの作れないだろと。実装もできない要員が設計をするケースがあるからだ。これは問題外だ。まず形にしないといけないのに形にできないひとがイニシアチブをもってはいけない。そのひと一人に任せて仕事がすすまないひとに仕事をまかせてはいけない。
仕事がメモとミーティングに埋まってしまぬよう独立して動ける規模までチームを小さくすることが必要だったのではないか。責任を分散するためだけに実質責任をとらない増員はじつに日本的。
3.皆を喜ばせようとすると、誰も喜ばない
誰のためのシステムだったのか調査報告書にない。事務費用が下がるというお題目での導入だが、利用者が不在なのではないか。何をつくろうとしているのか一言で言いあらわせたのだろうか?そのストーリーは1枚の紙に収めることができるほど洗練されていたのだろうか?
ビジョンはレガシーシステムからの次世代システムへの以降です!キリッ
じゃあその次世代システムをストーリで説明してごらんなさい?
4.ミーティングをしない
はっきりとした話の内容が決まっていないミーティングは絶対しないというルールがあったのなら、何年もやって何も決まらないということはなかったことだろう。大幹を定めることなく枝葉末節から積み重ねたのだろう。だがそんな木はたちあがらない。
5.仕様書などの書類はつくらない
Gettign Realでは仕様書は合意をしたという幻想にすぎないと切り捨てている。同じ文面のものを読んでいても、そこから考えることは人それぞれだからだ。仕様書に機能を書き加えればうるさい奴を静まらせることができる。だから機能が増え過ぎる。基本設計書は、サインされ同意されるもの。開発中アイディアが誤っていたと気付いても、そのまま進むしかない。結果、すすむことができなくなった。
彼らは書類しかつくらなかった。なんたることだ。
6.アイディアは実行しないと意味がない。
アイディアは形にしないと思いつかなかったのと同じ。形にしても公開しなかったら作らなかったのと同じ。
だがしかし、彼らはそもそもアイディアをまとめることすらできなかった。
設計すら終わらなかったものに133億投入した。これ以上残念なことはないと思う。
7.時間の細分化
Gettign Realでは何ヶ月も何年も先の見積もりはもはや空想だという。より現実的な6-10時間の単位で細かく考えるべきだ。一方、特許庁のシステムでは完成を6年先とした。
作らなければ利用者の評価は得られない。決断する時は必要な情報が手に入った時のはずである。優先順位をつけ、ものを作り、それがとりあえず形になってから次に何をしようかというまえに、まだ出来上がってもいないものの上に次を重ねた。やはり、もはや空想でしかない。
8.才能をさがす
遅延したプロジェクトに人を加えると、ますます遅くなる。(ブルックスの掟)
絵に描いたように200人から一気に450人まで増やし、1000人を超えたという。コミュニケーションコストはいかほどであっただろうか。文章がかけるからといって1000人集めたところでシェイクスピアのハムレットが出来上がることはない。一騎当千の才能が混じればそれもあるかもしれないが、それはただの確率でしかない。
9.情熱
たとえ奇跡がおきて確率的にそのような才能家が混じっても、集中出来る環境と情熱がなければ事はなしえない。炎上しっぱなしの環境下でコミュニケーションチャンネルがやたら多ければ集中できる環境には程遠い。しかも作成には掛かられず、ミーティングや進捗の報告、基本設計書や詳細仕様書の雑務に追われる。現場に幸せを感じ新鮮な情熱を保つ道理はない。
**感想
とほほの一言だ。
日本の官公庁をはじめ大企業は間違いがあってはいけないと完璧なものを目指す。そのため、事態が硬直化し、間違っているとわかっても修正が効かない。それで何とか動いても、制度疲労をおこし、全体として機能しなくなる。震災後の一連の対応をみてもわかるだろう。餅は餅屋と専門家を待ち続けたが、どこからも事態を解決してくれる餅屋はでてこなかった。
何のために古いシステムがあるのか、なんのために職員がいるのか、なんのために責任を取るべき立場の人間がいるのか、なんのために新しいシステムをつくろうとしているのかを忘れて、(Getting Real)実現するわけがない。そしてそれを阻害しない環境づくりが必要だ。
だが、環境づくりも仕組み構築か。
This is Japanese Real but not getting real.
参照::
特許庁情報システムの技術検証結果について www.meti.go.jp/press/2011/01/20120124001/20120124001.html
[続報]特許庁の基幹系刷新「中断が妥当」、外部委員会が報告書 itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120124/379194/
特許事務システムの刷新可能性調査結果 www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/hiroba/sisutem_kousin.htm
2010 年(平成 22 年)度 特許庁業務・システム最適化実施評価報告 www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/cio/dai43/siryou2/55.pdf
「特許庁情報システムに関する調査委員会」からの調査報告書の提出について www.meti.go.jp/press/20100820003/20100820003.html
調査報告書(PDF形式:1,180KB) www.meti.go.jp/press/20100820003/20100820003-2.pdf

